詰 所 用 パ ソ コ ン 制 作 記



余剰部品と廃材で作った詰所用の自作パソコンの制作記です。



近年、消防署への提出書類がマニュアル化・電子化され、どうしても
パソコンが必要になってきました。

また、詰所にて操法大会のビデオを観たいのに、最近はメディアが
ビデオテープではなくDVDという場合が多い為、OBが寄付して
下さったビデオデッキでは観れないという事象も発生し
それならば、、、と
団員宅で不要になったパソコンの部品と、廃材を利用し、低予算で
詰所用に文書入力・ビデオ鑑賞用のパソコンを制作してみましたので
紹介と併せ、制作工程などをまとめてみました。




~ 1.ケース選定 ~
まず必要なのはパソコンのケースです。
長く、詰め所に置かれることになると思われるので、あまり不格好でも困ります。
さりとて、デザインに優れたパソコンケースを用意するとなると、かなりの出費を
覚悟しなければなりません。

pcdiy_01 そんな折り、産業廃棄物処理場の片隅で、懐かしい
パソコンを発見しました。。。
それは、Apple社のパワーマッキントッシュ
8600でした。
このケース(筐体)は、その後 初代パワーマック
G3MTまで使われたもので、1984年に発売
された最初のマッキントッシュ、128kから
代々受け継がれてきたベージュ色最後の形です。

その昔、マッキントッシュにはロジックボード
入れ替えサービスというものがあって、旧型で
あっても本体を捨てることなく、

パソコンの背骨と心臓にあたる部分を簡単にアップグレード出来て、ゴミを最小限
しか出さないエコロジーで革新的なパソコンでした。
今でこそ環境配慮やリサイクルが叫ばれていますが、大量消費・大量廃棄の時代に
そんなことをやっていたのですから、凄いものです。

話が脱線してしまいましたが、、、外観は経年の割に綺麗なのに野晒しの状態が
なんとも切なく感じ、産廃業者の方に許可を貰い、引き取って、これを使うことに
しました。




~ 2.分解・清掃 ~


外装は経年の割に綺麗でしたが、野晒しになっていたので
内部のスチール製の筐体の随所に錆が出ていました。

元々付いていた8600の部品は、その殆どが雨に濡れた
痕があり、性能も今となっては使い物になりませんから
余剰部品で新たに組み立てる必要があります。
でも、このままの状態では自作用に規格化された部品が
使えないので、多少の加工も必要になってきます。

そこで、全部解体して一旦バラバラにし、構造を理解
した上で、ABS樹脂製の外枠は ぬるま湯に台所洗剤
を入れた盥を用意して漬け込み洗浄し、スチール製の
筐体は流水で洗い流しながら耐水ペーパーを使って
錆を取り除きました。

ほんの僅か手間をかけただけでしたが、写真の通り、
こんなにも綺麗になりました!

スチール製の筐体には、錆止め用にクリアーラッカー
スプレーを吹いておきました。
pcdiy_02
pcdiy_03



~ 3.組立ての考察 ~

次に、市販のマザーボードを
当ててみます。
マザーボードは、パソコンの
背骨に相当する部分で、ここ
に頭脳であるCPUや、拡張
カードやハードディスクと
いった様々な部品が取り付け
られ各部品と信号のやり取り
を行う、根本的な部品です。

当てがってみたマザーボード
は、拡張カードを7つ刺せる
ATXという規格のサイズの
ものですが、写真で判る通り
pcdiy_04
茶色く見えている一番上のビデオカード*1を刺すためのスリットが筐体にありません。
一回り小さいMicroATXという規格のマザーボードを使う必要がありそう
です。


*1 … ビデオカードとは、パソコンの画面に映像や文字を出力するための拡張
   カードで、単に出力するだけのものから、CPUに代わって3Dの物理
   演算をしてしまう高性能なものまで、様々なものがあります。



~ 4.筐体加工 ~
pcdiy_05 次に、電源を載せるスペース
を作る為に筐体を加工してみ
ました。
市販の規格化されたケースと
違うので、市販の電源がその
ままでは載せるスペースが
無いためです。

写真にあるように、ちょうど
CPUから出る熱をそのまま
電源装置のファンを利用して
裏面から排気も兼ねてやれる
ように、スチールの筐体を
くり抜いて、電源から伸びる
コード類を引き回しやすい
ように、下面も少し切り取り
ました。



~ 5.背面小加工 ~
写真は、MicroATX規格のマザーボードを仮固定し
裏から見た図です。
電磁波の飛散とゴミの侵入を防ぐ、I/Oシールドパネル
を取り付けてみると、上部に隙間が開いてしまいます。
そこで、パワーマッキントッシュ8600の基盤に付随
していたバックプレート部を寸法を測り一部くり抜いて、
当てがって隙間を塞いでみました。

みっともなく見える穴は、ホームセンターで売っている
パテを利用して塞いでしまいます。
pcdiy_06



~ 6.スイッチ加工 ~
pcdiy_07 パワーマッキントッシュ8600は、マザーボード上に
電源スイッチがあるので、スイッチが別パーツ化して
いる自作パソコンの規格ですと、このままではスイッチ
が入りません。
そこで、余剰部品からスイッチ部と電源LEDランプを
頂戴してきて、本体前面に伸びるスイッチボタンで
電源が入り、ランプが点灯するように改造を施しました

筐体にドリルで穴を開けて、ビス穴を2つ作り、そこに
スイッチ部品を固定し、手前にLEDランプを仕込んで
みました。



~ 7.仮組立て ~
筐体の加工が済んだので、一旦組み立てて、仕上がりを
確認してみます。

前面のフロッピーディスクドライブやDVDドライブの
排出ボタンやランプの位置が違うことが分かり、ベゼル
と呼ばれるABS製の化粧板に加工を施しました。
フロッピーディスクは、マッキントッシュの場合、排出
ボタンがない為、前後にずらす等の加工も必要でした。

また、前面下部のスピーカーは取り外してしまい、型枠
だけを利用して中身をくり抜き、吸気用のファンを入れ
てみました。

右側に見えているケーブルは前面に新たに設置する予定
のUSBコネクタとイヤホン・ヘッドホン端子です。
pcdiy_08



~ 8.外装塗装 ~
pcdiy_09 ベゼルの加工も済んだので、元々の排出ボタンの穴を
パテで埋めて隠したのち、
プラサフのスプレーを吹いて乾燥させ、耐水ペーパー
で表面を滑らかにし、パールホワイトを重ね吹きして
光沢のある白にしてみました。

最後にクリアーを重ね吹きして、耐水ペーパーで磨き
塗面の保護をしました。

塗っては乾燥させ、耐水ペーパーで塵を落として…の
繰り返しだったので、手間と時間はかかりましたが、
なかなか良い仕上がりです!



~ 9.キーボード&マウス ~
折角マッキントッシュの筐体
を使ったので、キーボードと
マウスもマッキントッシュの
物にしてみることにしました

詰所は会議室のようにロの字
型にテーブルが並んでいる
ので、パソコンから離れた
テーブルでも操作できるよう
Bluetoothという
無線タイプにしました。

パソコン本体は全て余剰部品
と廃材ですが、これは流石に
新品を用意しました。
pcdiy_10
マッキントッシュ用のものが、Windowsで使えるのか不安もありましたが、
キーボードとマウスに工場出荷時割り当てられている無線接続用のパスワードさえ
判ってしまえば、Bluetoothの規格は同じなので、比較的簡単でした。
無事認識に成功し、離れた場所からでもパソコンを操作できるようになりました。



~ 10.デカール&前面端子等 ~
pcdiy_11 昇華型プリンターとデカール
用紙を使って、塗装でロゴ等
が消えてしまった前面にロゴ
を復活させてみました。
折角なので、ロゴと同じ書体
フォントを手に入れて、制作
してみました。
機種ロゴは、詰所用という事
で、ちょっと遊んでみました

デカール用紙に印刷して適当
に余白を残して切り取り、
水に漬けて台紙が剥がれ糊が
出てきたら、貼り付けて乾燥
させます。
前面右下にケーブルを引き回して、USB端子とオーディオ端子を追加しました。
寸法を測ってからピンバイスで穴を開け、糸ノコで成型して裏側から接着剤で固定
し、端子にマスキングをしてデカールを貼った所と併せ、クリアーを吹きなおして
外装の完成です。
なお、広い詰所のために背面用のサラウンドスピーカーも別途用意してみました!



~ 11.インストール ~
本体が完成したところで、
いよいよOSとソフトウエア
のインストールです。
OSはパソコンを持つ団員の
殆どが触っているWinXP
にしました。
消防署に提出する書類を書く
ために、MS Officeを
皮切りに、あると役に立ち
そうなフリーソフト類も順次
入れてみました。

デスクトップは、折角の
マッキントッシュですから、
MacOS8.1に似せた形
で仕上げてみました。
pcdiy_12



~ 12.納入&設置 ~
pcdiy_13 いよいよOSとソフトウエア
全てが仕上がりテストも完了
したので、いよいよ納入して
設置です。
火災現場の情報が送られて
くる、支給されたFAXが
プリンターにもなるので、
折角なので、プリンターと
しても活躍して貰うことに
しました。

これと繋げる為に、設置場所
は限られてしまいましたが
レーザー式なので、書類を
印刷するのが高速で便利です
さらに、ビデオカードのS
端子出力と前面スピーカー
端子から隣接のTVに繋ぎ
スピーカー用の延長ケーブル
を買ってきて、パソコンと
反対側の壁際にサラウンド
スピーカーの設置も済ませ
ました。

映画館とまではいかない
までも、なかなかの臨場感
です。
皆でレンタルDVDを観る
のもバッチリOKです!
pcdiy_14



~ 付録.スペック ~
余剰品ばかりで作ったので、最新型のパソコンに比べると桁違いに遅いですが
コマ落ち無しでDVDビデオが観れて、文章が書けるので、特に問題はありません。
新たに購入したのはBluetoothユニットとキーボードとマウス、それに
スピーカー延長ケーブル程度で済みました。

古いマッキントッシュを知っている人が、Windowsが起動しているところを
見ると、かなりビックリしてくれます(笑)

・CPU:     Intel製 Pentium3 1.0GHz FSB133 L2:512KB
・マザーボード:  AOpen製 MX34 VIA KT133チップセット MicroATX
・メモリー:    IO-DATA製 DDR133 CL2.5 256MBx2
・ビデオカード:  ATI製 RADEON9600XT DDR 128MB AGP
・サウンドカード: Creative製 Sound Blaster Audigy2 LS
・その他拡張カード:玄人志向製 CHANPON4G-PCI LAN/USB2.0/IEE1394コンボ
・ハードディスク: Maxtor製 ATA100 200GB
・電源:      メーカー不詳 型番不明 350w~400w ATX12規格
・FDドライブ:  Oultech製 ミツミOEM 3.5" 2mode FDD
・光学ドライブ:  NEC製 DV-5700A DVD-ROM

オフィースが入っているので、消防署提出書類の作成の他に、研修旅行の
打ち合わせ等で、会議しながら表計算にてその場で即座に予算が振り分けられたり
と、かなり重宝してますヨ。


| Go Back ! | Back to TOP ! |




1996,2008 Tokorozawa Fire7 Volunteer Corps